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土肥あき子第二句集『夜のぶらんこ』


未知谷 2009年3月3日刊行 定価2,100円(税込)

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紹介文
小沢信男(作家)
才知は人に生得のものだろう。つまり運命なんでしょう。
   夜のぶらんこ都がひとつ足の下
たとえば四谷の土手でぶらんこをこげば、夜の新宿区のまたたく灯りは足の下だ。具体であり、同時に構成された映像でもある。
   流燈のゆく紐といてゆくやうに
   あちらからどつと来ました渡り鳥
直截な描写が、おのずからドラマの一齣でもあるような。一日二十四時間、一年春夏秋冬、ひょっとすると一生涯を、そんなあんばいに生きてしまうらしいとして、おりおりの十七文字は、まずは救いにちがいない。
   舐めて癒ゆるけものの傷や春寒し
ときに当惑であり、悲鳴でもあるだろう。
   蝌蚪に手の出てきて人に親知らず
   ぐつたりと引きあげられし水中花
しかし運命とは、その人ひとりのお荷物とはかぎるまい。はるかなる父祖よりの、そして……。
   時雨るるや沖とはたどりつけぬ場所
   猟犬に遠吠えといふ独り言
こしかたゆくすえの、あの辻この辻で点してきた十七文字の灯明が、ここに三百。
てのひらにのるほどの、そしてまばゆいあかるさを、われひと共にたのしみましょう。
   車座にひとり見知らぬ花衣
   小春日の玉砂利どれも孵りさう